STORY 恵南地方にまつわる50の物語

明智町 団子杉

耳をすませば… 巨樹の唄が聞こえる

樹齢約1000年の天然杉

明智の歴史を1000年に渡って見守ってきた団子杉。
とてつもない時代の変化の中で、他の天然杉が消えていこうとも、たくましく生き続ける老樹に、私たちは何を感じとるのだろうか。

不思議な樹形をしている

東海自然歩道が通る、明智町の静かな郊外に、「団子杉」はたくましく根を張っている。
まず、遠くから見てもひときわ大きく存在感がある。近づくと、私たちがイメージしている杉の特徴が全く無く、不思議な形に驚かされる。
私たちが見慣れている杉の形状といえば、主幹が真っ直ぐ上に伸び、ほぼ水平に近い上方に枝を張る。しかし、この団子杉は大らかに枝を放射状に広げ、形の良い円形になっているのだ。葉っぱを意識しなければ、その姿はケヤキかクスノキなどの広葉樹と間違えてしまいそうだ。
団子杉の幹の周囲は5.5m、樹高は18.2m。根張り東西、南北とも21mで、地上3mの辺りから38本もの横枝が四方に張り出し、樹形は団子のように丸味を呈しているところからこの名が付けられた。今から約150年前にあたる嘉永4年(1851年)の記録に、既に団子杉と記されていることから、年季が入った団子杉なのである。
周囲は柵で囲われ、十分な空気が与えられており、すぐ近くには、明知城の水源とされた沼もあり、老杉には申し分ない環境だ。
品種改良されない時代の、天然杉の唯一の残存と考えられ、県指定天然記念物に指定されている。
樹齢は、なんと!約1000年と伝えられ、更に成長し続けているそうだ。

歴史を見守る老樹

約1000年もの、とてつもない明智町の歴史を見てきた団子杉。
その歴史の中には、戦国時代の戦いに敗れた悲しい出来事もあるだろう。
天正2年(1574年)武田勢の攻略によって、明知城落城の際、城主一行は愛臣の遺骸をこの地に葬ったとも伝えられている。

昔から、老木には不思議な力が宿るといわれるが、団子杉も戦国武将の霊の守り手として、意志をもってあのような不思議な形に成長したような気がしてならない。

明智町一帯の自然環境は、暖帯性植物の北限地帯である。ササの類でいえば、暖地性のネザサ、メダケ、マダケが明智町に自生しているが、岩村町以北には分布しなくなる。ヤダケは、矢の主材料である点からみて、この分布が明智町までに限られることは、歴史上にも何らかの意味があるのかもしれない。
植物分布上における、明智町のもう一つの特徴は、西濃地方と植物の種類が全く異なる点だ。飛騨川を境にして、その東西でかなりの差異が見られる。
かつて、明智町には天然杉の森があり、団子杉はその唯一の残存物といえる。
県指定天然記念物である植物としては、「ヒトツバタゴ」もよく知られている。別名を「ナンジャモンジャの木」といわれ、雌雄異株の落葉高木である。5月に白い小花を咲かせ、雪をかぶったかのような見事な姿を見せてくれる。

マンホールの蓋にも団子杉

恵那市の下水道のマンホールの蓋には、様々なデザインが施されている。合併前の恵那市の花である「ベニドウダン」が描かれているもの、歌川広重の浮世絵が描かれているものもある。
明智町の下水道のマンホールの蓋には、中心に団子杉、周りを町の木であるカエデの葉に囲まれてデザインされている。

このように、地域のシンボルとして愛されてきた団子杉。悠久の時を刻んで今も成長し続けている。樹の下で目を閉じ耳をすませば、風に揺れる枝葉の音が、まるで団子杉が奏でる唄のように思えてくる。
人工杉ばかりになってしまった現在では、天然杉である団子杉の存在はきわめて貴重だといえる。

INFORMATION

名称
団子杉(県指定天然記念物)
場所
岐阜県恵那市 明智町大真菰
お問合せ先
0573-54-2111(恵那市明智振興事務所振興課)

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