大らかな風習
中秋の名月(十五夜)に、縁側など月のよく見える所に、薩摩芋、里芋、豆、丸い団子などに、ススキを添えて供えた。
現在でも、お月見には月見団子を供え満月を愛でるが、上矢作の風習である「お月見どろぼう」はユーモアがあり楽しい風習だ。
どろぼうとは、誰のこと?何を盗みにくるのだろうか?
その真相は・・・縁側に供えてある薩摩芋や団子などを、近所の子供たちが袋を持って、こっそり盗みに来るのだ。子供がお供え物を盗むことは、「月見泥棒」といって、この日ばかりは罪にならない。しかもお供えにお菓子も添えてあるので、子供たちの楽しみでもあった。
一方、お供えをしていない家には、子供たちが悪さ(いたずら)をして行くこともあったそうだ。更に、「月見の晩は何を盗んでもええ」と言って、なんと、畑のスイカや庭の柿の実をとっていくこともあった。
何とも大らかな風習だ。現代のように娯楽が多くなかった時代、そんないたずらを、楽しむ心の余裕が人々にあったのだろう。
時代の移り変わりと共に、「盗む」という行為はよくないとされ、今のような「お菓子をもらう」というスタイルに変わっていった。
今のように電気がなかった昔の人にとって、闇夜のお月見は神秘的であったに違いない。
月夜の中、子供たちが工夫を凝らしてうれしそうに走り回る光景を想像すると、思わず笑みがこぼれる。