STORY 恵南地方にまつわる50の物語

上矢作町 圓頂寺絵天井

大迫力!天井で舞いおどる龍神さま

岩村城より移築された貴重な天井画

かつて、明治維新に廃城になった岩村城に、ひっそりと龍の天井画は佇んでいた。
時を経て、圓頂寺に移された画は、出番を待っていたかのように命を吹き返した。
龍の瞳は、地域の人々の幸せと繁栄を願い、今日も見守っている。

地域に開かれたお寺

上矢作町の圓頂寺は、江戸時代(明暦頃)に開かれた曹洞宗の小さなお寺である。
曹洞宗は、禅宗の一つで、鎌倉時代に道元が中国から日本へ伝えたといわれている。大両本山は、福井県の大本山永平寺と神奈川県の大本山總持寺である。坐禅を修行の中心に据え、只管打坐という、ただひたすら坐禅を行うことを最も重視し、坐禅の状態で日常生活を生きていくことを説いている。

およそ350年前に建立された圓頂寺は、由緒あるお寺でありながらも、地域に開かれた親しみのあるお寺だ。宗教施設はもちろんのこと、お寺の本来の役割である地域の拠点、心の拠り所として機能させていきたいとご住職は語る。
そのために、坐禅会や写経会、ヨガ教室、精進料理などの各種体験や、外国人参禅者の受け入れも行っている。ご住職は若かりし頃、海外のお寺で修業を積んだ経験があり、それを活かしてユニークな発想で様々な国の人達と交流をはかっている。

迫力の天井画

圓頂寺といえば、市の文化財に指定されている、天井絵「八方睨みの龍」が有名だ。本堂の奥・開山堂にその天井画が納められている。
大きさは畳8畳分ほどで、まるでお堂の天井で暴れているような、その迫力に圧倒される。リアルな鱗、鋭い眼光に思わず足がすくんでしまう。八方睨みという名の通り、見る位置や角度によって、龍の動きや表情が変化するように見えるから不思議だ。
どこから見ても睨まれているという解釈もあれば、それぐらい地域に心を配る思いが込められているという解釈もある。
薄暗いお堂の中に、龍が浮かび上がる様は、何とも神秘的で歴史の深みを感じさせる。ぜひ、開山堂に座ってその迫力を体感して頂きたい。

この天井絵は、かつて岩村城に納められていた。城下や藩内の全てが、安泰に治まるように願いが込められた絵画だ。
明治維新に岩村城が廃城になり、その後圓頂寺が譲り受け現在に至っているそうだ。
作風から、江戸時代中期に狩野派の絵師によって描かれたといわれているが、作者の名前が記入されていないため、現在も謎のままだ。

龍の天井絵といえば、京都の妙心寺などがよく知られている。「龍神」といわれ、仏教を守護する八部衆でもある。そのため、禅寺の本山の多くでは法堂(はっとう)の天井に龍が描かれている。龍が法の雨(仏教の教え)を降らすといわれ、また龍神は水を司ることから、「火災から守る」意味も込められているそうだ。

笑顔あふれるマルシェ

2018年の11月。秋深まる圓頂寺は、たくさんの人でにぎわっていた。第5回「地蔵マルシェ」の日だ。
お寺の境内や本堂の中に様々なお店が並び、子供から大人まで笑顔であふれている。こだわりの珈琲や手作りパン、手作りお菓子など、どれも美味しそうで目移りしてしまう。飲食だけでなく、おしゃれなハンドメイド雑貨やネイル、整体など、出店者との会話も弾む。ワークショップも豊富で、完成した作品を満足気に見つめる女の子が印象的だ。
別の回では、命の大切さをテーマにした救急講習やコンサート、スタンプラリーも行われ、地域の人も遠方から訪れた人も絆を深め合った。

ご住職の奥様が中心になり始まった、新たな試み「地蔵マルシェ」には、お二人のこんな思いが込められている。
「ヒトがモノをつくり、ヒトがコトをおこす。ヒトとヒトをつなげたい。お寺は本来、人が集まる場所です。」人と人をつなぐ寺の務めを、時代に即したスタイルで実現したい。
開放された境内は、たくさんの人の笑顔であふれている。お二人が目指す開かれたお寺は、これからも更に進化していくことだろう。
歴史の重みを感じる天井絵「八方睨みの龍」。そして、新しい風を呼び込む様々な取り組み。そのどちらも、未来に受け継がれていく大切な恵南地域の宝物だ。

INFORMATION

名称
八方睨みの龍の絵天井
場所
岐阜県恵那市 上矢作町本郷2959
お問合せ先
0573-47-2107(円頂寺)

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