STORY 恵南地方にまつわる50の物語

上矢作町 大船神社

山の精霊に守られたパワーあふれる神域

大船神社にまつわる数々の伝説

遠き日より村人の支えとなり、誇りとして語り継がれてきた大船山。
今なお、ひっそりと悠久の時を刻み続ける大船神社と巨木たち。
その神域に入ることが許された私たちは、その場所で一体何を感じとるのだろうか。

大船神社とは

上矢作町の東北東の彼方、ピラミッド型にそびえる独立峰大船山。標高は1159mで、その山頂付近に「大船神社」がある。数千年前、真言密教の修験者達によって開かれた信仰の山である。その後信仰の拠点として、大船神社(江戸時代までは六社権現と称され、主祭神は高野山の祭神高野明神、丹生明神)が建立され、今日まで厚い信仰により守られてきた。

大船神社の前身は、勝岳山大船寺という寺院で765~767年(天平神護年間)に、奈良東大寺の初代別当良弁が開いたと伝えられている。その後、明治の神仏分離令により、山中の六社権現が残って現在の大船神社になった。
参道の終点から、神社境内への急な階段を上がりきると、そこに大船神社の境内が広がる。静寂の中、時折鳥のさえずりや木々の葉が揺れる音がする。凛とした空気感がただよう場所だ。
拝殿は、明治末期に宮大工の名工、尾張家御大工九代目、伊藤平左衛門により竣工された。柿葺(こけらぶき)であった屋根を銅板葺にしたが、他は建設当時のままの姿で保存されている。簡素だが気品がある拝殿だ。

すばらしい文化財・天然記念物

大船神社には、文化財に指定されている貴重な彫刻や巨木などがある。
1856(安政3)年の、神社改築の折に彫られた本殿の彫刻は圧巻だ。本殿内正面上部に三態の唐獅子、波、牡丹をくわえる唐獅子などが彫られ、脇障子は、右に麒麟、左に鳳凰などが写実的に表現され、躍動感あふれるドラマに思わず息をのむ。この彫刻は、県の重要文化財に指定されており、立川和四郎富重の作で、彫りを極めた匠の技に陶酔するひと時を味わうことができる。

また、大船神社に至る参道には、約300本の赤松が約4kmにわたって立ち並ぶ。昭和34年に岐阜県天然記念物に指定され、昭和58年には「日本名松百選」に選ばれた。松並木は、江戸時代に信仰の厚かった領主(岩村藩主)が、大船神社参拝に訪れた際、参道に日除けとして植えられた松であると伝えられている。赤松の樹齢は推定230年である。
そして、深閑とした境内を抜け森に向かう。前方に推定樹齢2500年ともいわれる「弁慶杉」が姿を現す。迫力の樹幹、近寄ってその巨木を仰げば、強靭な生命力とその鼓動に圧倒され、しばしたたずむ。その昔、義経一行が奥州に落ち逃れる際、弁慶が杉の小枝を折って、「願いむなしからずんば、この枝生い栄よ」と地に挿して祈願したのがこの大杉だとする説がある。以後「弁慶杉」と呼ばれるようになったとか。

そんな上矢作町のシンボル「弁慶杉」が、平成29年10月の台風により大きな被害を受けた。猛烈な暴風のため、弁慶杉の頭頂部の枝が折れてしまった。今後樹木医と相談し、治療保存していく予定だが、何とか頑張って生き抜いて欲しいと地元の人達は祈っている。

パワースポットとして話題に

近年若い世代の人達の間で、パワースポットめぐりが人気になっている。大船神社もいつの頃からか、パワースポットと呼ばれるようになり多くの人が訪れるようになった。
確かに、ピラミッド型にそびえる大船山、真言密教の修験者達によって開かれた信仰の山というだけでも、神秘的なパワーを感じさせる。神楽殿の前で柏手を打つと、周囲の山から山びこになって返ってくる。弁慶杉に行く途中に、人がスッポリ入れる「うろ」のある木があったり、面白い体験ができる。

大船神社がパワースポットといわれるのは、深い山の中で大自然の精霊に守られた神域だからではないだろうか。訪れる人々は、その壮厳なご神徳を存分に享受して、日常に帰っていく。そんな大切な場所があることは、恵南地域にとって誇りである。

INFORMATION

名称
大船神社
場所
岐阜県恵那市 上矢作町 1307番地1

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