STORY 恵南地方にまつわる50の物語

山岡町 登り窯

土と炎をあやつるこだわりの窯

陶土の町 山岡に登り窯を再現

自分で土をこねろくろを回し、登り窯でじっくり時間をかけ完成した作品。
「感動」というストーリーがそこにある。

再現された貴重な窯

登り窯は、山岡陶業文化センターに2004年(平成16年)に建設され、町おこしの一環として現在も活躍している。
山岡町の南西部一帯、特に原地区を中心とした地域は良質な耐火粘土(蛙目粘土)に富み、江戸時代からその発掘が行われてきた。

かつて町内には原地区を中心に、薪を使って磁器を焼く登り窯がたくさんあったのだが、戦後になると石炭窯に代わり当時の様子を知る人も少なくなってきた。
そこで当時の山岡の窯業を支えてきた登り窯を再現しようと、地域が一体となって築いたのだ。
登り窯は地元の材料を使用することにこだわり、窯を構築するレンガも市販の耐火レンガではなく、以前山岡町の窯に使用されていたクレーブロック(粘土のかたまり)を使用する事にした。地元で採掘した良質な陶土は、収縮率が少なく断熱性に優れていることから最適だった。その為まずはクレーブロックを作ることから始められた。
一つ一つ手作業で積み上げる地道な作業だが、有志の熱意と努力により窯の再現を達成したそうだ。
そして、初窯は「まず窯を焼くことから」が大切で毎日雑木を燃やし窯が乾燥するまでその作業は続けられる。
いよいよ初窯焼成を迎え、陶芸教室の生徒さんの作品や町内の子供達、高齢者の方々の茶碗など2084点もの作品が窯の中に詰められた。
火入れ式を行い、「5昼夜」焼成が行われる。天候、気温、風向きという自然を相手に交代で薪をくべ、徐々に窯内の温度を上げていく匠の技に脱帽だ。

登り窯の仕組みは三連房であり、手前に胴木の間がありここに入れた薪が一の間を燃やし、その熱が二の間へ、そして三の間へと続く。低い方から高い方へ移動していくのだ。
窯の奥行は7.0m、幅は2.5m~3.1mあり、どんな仕組みになっているのか奥はどうなっているのか興味をそそられる。

年に一度の登り窯フェア

そんな貴重な登り窯焼成を見学・体験できるチャンスがある。毎年秋開催予定の「登り窯フェア」で火入れ式から焼き上げまでを堪能できる。
フェア当日は、陶器のバザーやろくろ体験、とんぼ玉体験、マツタケごはんや豚汁、窯焼きピザなど飲食店も充実していて大人から子供まで楽しめる。
祭りの前夜、地元の人々と共に登り窯に薪をくべ語らい合う体験はなかなかできることではないだろう。

登り窯がある山岡陶業文化センターは、平成10年に地域産業の振興、文化の保存、人々の交流の場づくり、町おこしを目的として開館した。更に平成14年には陶業ギャラリーも開設され地域の人々や陶芸ファンで賑わっている。
センター内では陶芸教室があり、広々としたスペースで自由な発想、マイペースで作陶できるから楽しい!と評判だ。なんと、土選びから土練り、作り、削り、そして乾燥後の釉掛けまで自分流で作る満足感が味わえる。
もちろん手びねりから専門的な技法までスタッフが優しく指導してくれ、迷った時は気軽に相談できるから心強い。
2時間で気軽に作れる体験コースもあり、旅の途中で陶芸にいそしむ人も多い。
そして、会員になると年に一回それぞれの自信作を登り窯で焼いてもらえる山岡ならではの特典があり、ガス窯や電気窯とはひと味違う仕上がりを堪能できる。
更にその作品を、企画展やイベントなどで発表・販売できるのもやりがいに繋がっている。

なぜ今、登り窯なのか?

情報に溢れすぐに物が手に入る現在、私たちの生活は大変便利になった。しかしその物が自分の手元に来るまでのストーリーが無いのだ。
そのストーリーとは、土や薪をくべる時の匂い、炎がパチパチと弾ける音。自然と会話しながら心を一つにして焚き上げる体験。

そんな感動を味わえる登り窯は、恵南地域にとって貴重な存在だ。

INFORMATION

名称
登り窯フェア
場所
岐阜県恵那市 山岡町原1105-1
お問合せ先
0573-56-4567(山岡陶業文化センター)

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