STORY 恵南地方にまつわる50の物語

山岡町 春日神社大祭

鎮守の神に捧げる鈴の音

950年の歴史深い神社の祭り

「村の鎮守の神様の、今日はめでたいお祭り日。ドンドンヒャララ~」
山岡の鎮守の森のお祭りは、この歌がどこからか聞こえてくるようだ。
失われつつある日本の故郷の風景、素朴な人々とのふれあい。懐かしい光景に、子供の頃に歌った「村祭り」を口ずさむ。

春日大社の分社

春日神社は、山岡町馬場山田の静かな森の中に佇む、歴史ある神社だ。奈良の春日大社より分社され、950年前に創建された。御祭神は、春日社神の天児屋根命(あめのこやねのみこと)、八幡神社の第15代応神天皇が祀られている。
「天児屋根命」は、藤原(中臣)氏の祖神として祟敬され、天の岩戸開きにおいて祝詞を奏上したといわれ、神事や政治、歌の神様として崇められている。

全国の春日神社の総本社である春日大社は、春日山原始林を背景に、奈良公園内にある大変有名な神社だ。平成10年には、春日大社や春日山原始林を含む「古都奈良の文化財」が、ユネスコの世界遺産に登録された。
奈良時代に、平城京の守護と国民の繁栄を祈願するために創建された。境内は古代から神域とされていた御蓋山一帯に広がり、原始林に守られているかのように鮮やかな朱塗りの社殿が美しい。
春日の神様が、鹿に乗って来たという伝説から、奈良の鹿は「神様の使い」として大切にされてきたのだ。

優美な舞いに酔いしれる

そんな、由緒ある春日大社の分社として創建された山岡町の春日神社も、原始林の中に鎮座する古社である。春日神社では、毎年10月の第1日曜日に、「春日神社大祭」が行われ、氏子地域の人々で境内はにぎわいを見せる。
例大祭は、田沢区民と山田区民の合同で行われ、例祭が粛々と執り行われる。お囃子の笛の音が境内に響き渡り、保存会による伝統芸能「獅子の舞」が奉納される。獅子舞は、田沢区と山田区がそれぞれに演じ、男性の役者が鮮やかな着物をまとって、女獅子を演じる。その動きは、大変迫力があり情感たっぷりだ。両区がそれぞれ例大祭に向けて、練習を積み重ねてきたのだろう。更に、代々伝統を受け継いでいる、「巫女舞」も素晴らしい。両区の小学6年生の女児8人で舞い、夏休みを中心に2ヶ月間練習して、本番を迎える。
『豊栄の舞(とよさかのまい)』と『浦安の舞(うらやすのまい)』の祭祀舞の曲に合わせて、優雅に舞うその姿に皆見とれてしまう。豊栄の舞は乙女舞ともいわれ、舞人は榊または季節の花を右手に持って舞うのだ。この舞は、太陽の恵みや生きていることへの感謝、自然への感謝が込められている。
浦安の舞は、前半の扇舞と後半の鈴舞とがあり、鈴を鳴らしながら邪気を払う優美な動作に感心しながら、雅楽の音に酔いしれる。鈴の音色を聞いていると、自然と身も心も清められていくような不思議な気持ちになるのだ。浦安の舞の「うらやす」は、明鏡止水、心の中がすっきりとした安らかな状態のことを指す。まさしく、この舞いにぴったりだ。
むつかしい舞いを演じきった舞人は、やりきった清々しい笑顔でいっぱいだった。

祭りを支える人々

例大祭が終了すると、いよいよ余興が始まる。プロの歌謡ショー、保育園児の可愛らしい踊り、有志によるカラオケ大会まで行われる。
ステージの周囲にはご座が敷かれて、田沢区と山田区の各組ごとに座り、ステージを楽しむ。区民の女性は、巻きずしやいなり寿司、おはぎ、郷土菓子のからすみなどを重箱に入れて持ち寄り、皆で食べながら親睦を深める。
ステージに登場する孫のダンスに拍手する人、豪華なドレスに身を包み、得意の曲を熱唱する隣人を応援する人など、楽しいひと時だ。
そして、ラストに豪華景品のビンゴゲームが始まり、子供も大人も大盛り上がり!
こうして、春日神社大祭が全て終了する。
 
例大祭の獅子舞や巫女舞、余興の準備など、全て区民の人達で行われている。来賓の方々に失礼のないように、氏子さんの協力、神社の組世話人の人達の協力なくしては出来ないだろうと、氏子総代の方は語る。そして、子供が少なくなってきている今、何とかこの伝統行事を守っていけたらという、熱い思いを感じ取った。
この思いが、後世に受け継がれていくことを願うばかりだ。

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