良質の天草を100%原料に
ところで、寒天の原料といえば「天草(てんぐさ)」で、つまり海藻だ。山岡町に海は無く、四方を深い山々に囲まれている。ではなぜ、海の無いこの町で寒天製造が盛んになったのだろうか。
細寒天の製造過程は、まず主原料である国内産の天草を水に浸し、塩や砂を除去して更に洗浄機にかける。その後、寒天液を天草から取り出すために、直径1.6m以上の大きな釜に入れて煮る。煮だした汁を、寒天液と天草のかすと分け、寒天液を型に流し込み固める。
凝固したものを羊羹状に成型し、よしずの上へ、その羊羹状に切った寒天質を天筒で突き出す。天筒からスルスルと出てきたものが、あの「ところてん」だ。突き出しと呼ばれるこの工程は、一般の人も体験することができる。
そしてここからが、なぜ寒天製造が盛んになったのかの答えが隠されている。
寒天質を干して乾燥させ、水分を抜いていく。この水分をすっかり抜いた状態が細寒天である。水分を抜く過程で必要なのが、「凍結」と「乾燥」だ。昼と夜の寒暖の差が激しく、かつ、雪や雨があまり降らない(雨や雪に含まれる汚れが寒天にしみ込んでしまう)地域が寒天づくりに適しており、まさに、山岡町の気候は寒天づくりに最適であった。
製造工程の中で、一番要になるのが、「乾燥」の工程だ。夜中の間に厳寒期にはマイナス10℃以上に下がる気温により、干した寒天質は凍結する。昼間は気温も上がり解凍される。この凍結と解凍を20日程くり返し水分を蒸発させるのだ。
この間、気温や天候を見ながら、氷柱を削った氷をかけて温度調整するなど、寒さの中付きっきりで作業をする。
その後、自然乾燥で干しあがった寒天に、汚れなどないか一枚ずつ丁寧に検品し完成する。