STORY 恵南地方にまつわる50の物語

岩村町 岩村町獅子舞

脈々と受け継がれる地域の伝統

岩村町獅子舞の由来

岩村の獅子舞は、『岩村町史』によると、
嘉永5年(1852)の「武並宮御祭規矩」に獅子舞に関する記載があり、
現在につながるものとすれば、それ以前から演じられてきた。

岩村町獅子舞の独特の演目「葛の葉姫の子別れ」が母情を誘う

およそ四百年の間守られてきた、岩村の伝統・秋祭り。その岩村町秋祭行事の初日の晩に、「岩村町獅子舞保存会」による情緒あふれる獅子舞が上演されている。
岐阜県重要無形民俗文化財に指定されている、大変貴重な郷土芸能だ。

軒先にあんどんの灯りがともる頃、古い町並みに舞台が出現する。演じる者と観る者がひとつになる路上での獅子舞は、今まで体験したことのない臨場感が迫ってくる。
旧岩村城下町の街路五ヶ所(領家新町境・新町西町境・西町本町五丁目境・本町五丁目四丁目境・本町三丁目二丁目境)の路上で上演され、場所ごとに演目が異なる。
お囃子の音に誘われて行くと、子供たちが囃子屋台を曳きながら、軽快にお囃子を奏でつつ移動している。そして、観衆が回りを取り囲む中で、「悪魔払い」「おかめひょっとこ」「いざり勝五郎」「お染久松」「葛の葉」「八百屋おしち」などの演目が上演される。
特に、庚申堂前で演じられる「葛の葉姫の子別れ」は、幾重にも観衆の人垣ができ、岩村町獅子舞の魅力を存分に感じることが出来る演目だ。

「葛の葉姫の子別れ」という演目は、平安時代に活躍した、陰陽師・安倍晴明の生い立ちを人形浄瑠璃・歌舞伎の脚本として取り上げたもので、晴明の父・安部保名が、和泉国篠田の森に棲む白狐と契り、吾子(安倍晴明)を成したという伝説から、さわりの部分だけを演じている。
白狐が傷ついていた時に、安部保名に助けられた。その後白狐は、保名の許婚者である「葛の葉」に化けて子を設け、親子3人で暮らしていた。しかし、葛の葉自身がやって来ることになり、白狐は元の狐の姿に戻り、とうとう別れの時が・・・その際、自分の体に残された人間の部分を使って、別れの和歌をふすまに書き連ねる。「左手」「口」「足」を使い、器用に書く姿に一同拍手喝采で、男性が女装して優雅に舞う姿に更に感嘆の声が上がった。獅子は、終始無言で、浄瑠璃風の語りに合わせ女形の所作を演じている。男性が演じているとは思えない、母情がその場を包み、観衆の涙を誘う。

受け継がれる伝統

岩村町獅子舞は、江戸時代末にはすでに行われていたと伝えられている。武士や町人ではない、岩村城下町の農村部の「入り四郷」と呼ばれる4つの集落の人々によって、保存伝承されてきたそうだ。集落は、一色・領家・大通寺・山上の4つで、赤い雌獅子頭をかぶった振り袖姿の女装の男性が舞い、「悪魔祓い」や「獅子芝居」などを演じる。
同市の山岡町下手向の獅子芝居は、大正期に岩村の獅子舞演者に習ったといわれ、伝承の流れを見ることができる。

稽古は、岩村町領家の岩村町獅子舞会館で行われている。岩村秋祭の夜公演より1か月前から、毎日熱気あふれる稽古が続けられるのだ。
現役で活躍する指導者、現役継承者も多く、後継者の育成の体制はしっかり整っているから安心だ。

岐阜県では、古くから獅子舞・獅子芝居などが盛んで、全国的にも有名である。2018年11月には、「第18回岐阜県獅子芝居公演」が開催され、県内3市1町に伝承されている獅子芝居が一同に会して、魅力ある獅子芝居を披露した。その際、岩村町獅子舞は「葛の葉姫の子別れ」を熱演し、観衆の心をつかんだ。

独特の世界観

岩村町の獅子舞の魅力は、何と言っても夜に路上で上演されるところだろう。獅子舞のストリートパフォーマンスは、中々観られるものではない。
暗がりに浮かび上がる、鮮やかな振袖が優雅に舞い、その独特の世界観に観衆は魅了される。演者の息づかいが聞こえるほど、間近で迫力を感じられるのは、路上公演ならではの良さではないだろうか。
「おかめひょっとこ」が披露されると、面白おかしく踊る様子に、子供から大人まで笑いがこぼれ、皆が笑顔になる幸せなひと時でもある。
今も大切に継承されている、岩村の郷土芸能の獅子舞を、これからも多くの人達に観賞してもらいたい。

古の空気感を漂う獅子舞の魅力は、今という時代だからこそ見直されていくだろう。

INFORMATION

名称
岩村町獅子舞
場所
岐阜県恵那市 岩村町
お問合せ先
0573-43-3231(恵那市観光協会 岩村支部)

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