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STORY 恵南地方にまつわる50の物語

串原村 中山太鼓笛づくり

これぞ匠の技!郷土愛あふれる美しい音色

笛づくりを受け継ぐ貴重な存在

その繊細で澄んだ音色に瞼を閉じると、懐かしい故郷の風景がうつしだされる。
自然豊かな野山、清流の水音、にぎやかな祭囃子。
故郷を愛する思いが込められた笛は、そっと・・・人々の心に寄り添うようだ。

笛づくり名人

串原で、毎年10月に行われる「中山神社例大祭」では、古くから伝わる伝統芸能「中山太鼓」が奉納される。打ち手が踊りながら、太鼓を代わる代わる打つ『回り打ち』は、大変迫力があり、遠方からも多くの観光客の人々が訪れにぎわう。

その中山太鼓と共に、祭囃子の中で無くてはならない楽器が笛だ。その笛を50年余り作り続けている「笛づくり名人」が、串原で生まれ育った大島正昭さんである。
大島さんは、父親から笛づくりを受け継ぎ、仕事の合間をみつけては笛づくりに勤しんできたそうだ。自宅にある工房には、笛づくりの材料である竹や道具類がきちんと置かれ、物を大切にする昔ながらの職人さんでありながら、物腰の柔らかいお方だ。
笛は、年間に40~50本作るそうだが、その手間とかかる時間には驚いた。
材料の篠竹(シノダケ)を採ってから笛の完成まで、なんと!6年もかかると聞き、改めて名人の凄さを実感した。

笛づくりの工程

大島さんの作る笛は、11~13本調子の高い音色の笛だ。美しい音色を出すためには、まず、材料である竹の選別が重要になる。篠竹は、通称「メダケ」と呼ばれ、細く、節と節の間が長い。真っ直ぐな篠竹を求めて、遠方まで出向くこともあるそうだ。
伐採した篠竹は、一見真っ直ぐに見えるが、笛の長さに切ってみると微妙に曲がっていることがある。その曲がりをトーチであぶりながら、1年かけて真っ直ぐに調整していく。その後、竹に含まれる水分を抜くために、4~5年ねかすのだ。更にトーチであぶりながら、油抜きもして、いよいよ細工作業に取りかかる。
唄口という息を吸い込む穴を、専用の道具でこすりながら広げていき、中も表面もきれいに磨いていく。その後寸法を測り、専用のキリで指穴を慎重にあけていく。シンプルな構造の横笛だけに、匠の技が必要だ。
そして最後の工程、保護のため樹脂うるしを表面に塗り完成だ。
最近では、黒に塗った笛に金粉を散りばめ装飾した笛が人気で、注文を受けることもある。

大島さんの笛は、昔ながらの伝承を大切にしながら、少し遊び心があり少しずつ進化しているのが素敵だ。1年に、1~2本これは!という出来栄えの笛があるそうで、大切に保管して更なる創作意欲につなげている。
工房にて、3本の太さの違う笛を吹いてくださり、その音色の違いに感銘を受けた。一番細いものは、高音の鳥のさえずりのような音色、少し太くなると落ち着いた音色、更に太くなると重厚感のある尺八のような音色になる。この3種の笛でのハーモニーも、きっとすばらしいだろう。

故郷への思い

笛づくりをしていて、苦労はほとんど無く、楽しいことばかりが思い出されると大嶋さんは微笑む。その中で、一番記憶に残っている出来事が、昭和57年の串原村中学校卒業式での思い出だ。卒業生が中山太鼓を勇敢勇壮に叩いている模様が、テレビ番組で放映された。その時、偶然その放映を見ていた四国のある神社の方が、中山太鼓笛の演奏に魅了され、ぜひ我が神社の祭りに取り入れたいと、申し入れがあったそうだ。
そして、串原の太鼓や大島さんの作った笛は四国に旅立つことになり、まるでお嫁に出すような気持ちになったと、笑いながら大島さんは語った。
その後、四国の神社とは長いお付き合いとなり、中山太鼓の分家として現在も交流が続いている。

6年という歳月をかけて作られる、篠竹の笛。その音色を聞いていると、大島さんの故郷を愛する思いが伝わってくるかのようだ。
この匠の技は、いずれ次の世代に受け継がれていくだろう。いや、そうあってほしいと願うばかりだ。
中山神社例大祭という晴れ舞台で、美しい音色を奏でる笛。そのすばらしさを、ぜひ現地で体験して頂きたいものだ。

INFORMATION

名称
中山太鼓笛づくり
場所
岐阜県恵那市串原3146-3(観光協会 串原支部)
お問合せ先
0573-52-2111(串原振興事務所内 恵那市観光協会 串原支部)

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