STORY 恵南地方にまつわる50の物語

串原村 串原郷土館

懐かしくて新しい郷土館・古民家カフェ

ダムに沈んだ民家を移築した歴史資料館

広い縁側に腰かけ、目の前に広がる自然豊かな庭を眺める。
味わいのある建物、奥矢作の村の人々の生活に想いを馳せ、あたたかいひと時を過ごす。
癒しの古民家カフェに、今日もまた人が訪れる。

大切な故郷を再現

恵那市串原に風情あふれる建物がある。「串原郷土館」は、江戸時代末期の民家で、かつての村人が使っていた民具を展示する歴史資料館で、文化財にも指定されている。

昭和43年、美濃・三河の国境、矢作川の上流に多目的ダムが建設された。そのため、川沿いの耕地と民家70戸が水没したそうだ。遥か縄文の頃から人が住み、暮らしを営んできた大切な故郷。そこを離れる人々の心痛と苦労と共に、その姿を永遠の心に留めようと、水没家屋の代表的な民家を移築した。それが串原郷土館である。
所蔵されている生活文化財は、なんと600余りもあり、この地方の村の生活探求の好資料となっている。更に、“望郷の碑”と共に在村者と離村者を結ぶ貴重な絆でもあるのだ。

郷土館屋外には、ダム建設により湖底に沈む石仏の一部が移され、たたずんでいる。馬頭観音、六字名号塔、三十三体仏、五輪塔、庚申供養塔など多種多様の石仏が造立されている。野の仏として、自然にとけこむその姿は、素朴な村の生活の記憶を呼び起こすようだ。

ひと味違う古民家カフェ

そんな味わいのある古民家、串原郷土館が2016年にカフェへとリノベーションを果たした。リノベカフェ『サトノエキカフェ』は、普通の古民家カフェとはひと味違う。郷土資料館ならではの生活用品が、カフェの一部として溶け込んでおり、実際に生活をしているような、まるでタイムスリップしたような感覚になるのだ。
土間で靴を脱いで上がると、タンスやイス、またミシンや機織り機などが置いてあり、思わず日本独特のデザインに見とれてしまう。野良着・普段着・晴れ着などの着物をつくる布は、それぞれの糸で織り、縫って作られて、代々伝わる技術がこの機織り機によって支えられてきた。
立派な梁(はり)が、張り巡らされた店内、かつて馬小屋だったスペースを、地元の人々やお客さんが手作りの品を販売するスペースに変え、幅広い年齢の人達の交流の場になっている。
奥矢作の村の人々が、日常生活の中で使っていた古いアイロンや、昔の教科書なども部屋の片隅に置かれ、昔を懐かしむ地元のおばあちゃんや、興味津々の若い人達との会話が弾む。

『サトノエキカフェ』は、京都より移住して来た夫妻が営んでいる。元々京都の町家暮らしをしていて、飲食店をやっていたご主人がお店を開くことになり、大自然と歴史ある建物に惹かれてこの場所を選んだそうだ。
郷土館に併設されたカフェということもあり、郷土を大切にしている地元の方や、この建物を評価してくれている大学教授の方々など、皆が心地良い空間をつくることを大切にしている。

温もりのやさしい味

「NPO法人奥矢作森林塾」の『空き家リフォーム塾』事業の一環で、カフェを併設し甦ったこの建物。カフェスペースでは、美味しく身体にもやさしい、日替わりランチプレートが大人気だ。雑穀米にやさしい味付けのお惣菜、お味噌汁も付いている。ピリッとしたイエローカレー、グリーンカレーも美味でファンが多いそうだ。
ショーケースに並んだ焼き菓子も美味しい。甘さと辛さが絶妙な「自家製ジンジャーエール」もおすすめだ。
民具がインテリアのようにディスプレイされていて、レトロな懐かしさとアンティークカフェのようなおしゃれな雰囲気が漂い、いつまでもゆっくりしたくなる空間だ。

歴史資料館という枠組みに捉われない、レトロでおしゃれな空間。しかし、そこには子供も大人も、地元の人も遠方から訪れた人も、懐かしくて癒される魅力がつまっている。懐かしくて新しい、串原郷土館は大切な宝だ。

INFORMATION

名称
串原郷土館
場所
岐阜県恵那市 串原1268
お問合せ先
0573-52-2411(NPO法人 奥矢作森林塾)

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