大切な故郷を再現
昭和43年、美濃・三河の国境、矢作川の上流に多目的ダムが建設された。そのため、川沿いの耕地と民家70戸が水没したそうだ。遥か縄文の頃から人が住み、暮らしを営んできた大切な故郷。そこを離れる人々の心痛と苦労と共に、その姿を永遠の心に留めようと、水没家屋の代表的な民家を移築した。それが串原郷土館である。
所蔵されている生活文化財は、なんと600余りもあり、この地方の村の生活探求の好資料となっている。更に、“望郷の碑”と共に在村者と離村者を結ぶ貴重な絆でもあるのだ。
郷土館屋外には、ダム建設により湖底に沈む石仏の一部が移され、たたずんでいる。馬頭観音、六字名号塔、三十三体仏、五輪塔、庚申供養塔など多種多様の石仏が造立されている。野の仏として、自然にとけこむその姿は、素朴な村の生活の記憶を呼び起こすようだ。