明知鉄道は昭和60年11月16日に国鉄明知線（昭和9年6月24日開業）を引き継いで第三セクター方式の経営形態として発足し、開業した地方鉄道だ。
岐阜県恵那市大井町（中央線恵那市）を起点に、日本大正村で有名になった恵那市明智町に至る東美濃地方の高原地帯を縫って南下する全長25．1kmの路線である。恵那駅（恵那市大井町）と日本大正村がある明智駅（恵那市明智町）間の約25キロを結ぶ情緒あふれるローカル列車だ。
1両編成で走行するこの電車は、地元の学生や通勤の足として、慣れ親しまれている。

各駅を順にたどってみよう。恵那駅は、JR中央本線との接続駅で多くの通勤者、学生で賑わう。恵那峡や中山道大井宿などへのアクセスはこちらが便利だ。長閑な田園風景の中、東野駅を走行し、日本一の勾配（1キロで33メートルの高低差）を誇る飯沼駅を過ぎ、阿木駅を通過して、「日本一の農村景観」として指定されたことで有名な、飯羽間駅を走行する。次の極楽駅は、2008年に開業した11番目の駅で、駅の中に菩薩像や地蔵が置かれている。近くに「極楽寺」があったことからこの駅名となった。設置されているボタンを押すと、極楽音頭が流れる。他の駅から硬券の「極楽行き切符」を買うこともでき、何とも個性的な駅で話題になっている。そして次の駅は、「女城主の里」として有名な岩村駅だ。岩村城跡からまっすぐに続く城下町には歴史ある旧家や酒屋、カステラ屋などレトロな町並み散策を楽しむことができる。話題の五平餅の香りが食欲をそそる。

次に見えてくるのは、花白温泉駅だ。駅に隣接する花白温泉は、薪で沸かした珍しい湯が評判で、地元の人々の憩いの場であり美味しい食事もゆったりと味わうことができる。次の駅は、山岡駅。隣接する食の健康拠点施設「山岡駅かんてんかん」があり、山岡町特産「細寒天」の商品や寒天レストラン、森の列車カフェ、寒天資料館も併設され観光客も多い。明知鉄道株式会社が運営しており、細寒天の素晴らしさを多くの人に知ってもらうため、商品開発に力を注いでいる。
心癒される田舎の風景を眺めながら野志駅を過ぎ、多くの観光客で賑わう「大正村」がある明智駅に・・・大正ロマンあふれる旧い町並みを歩けば、大正時代にタイムスリップしたようだ。明智光秀ゆかりの地でもあり、歴史ファンも多く訪れる。

恵那駅から明智駅までの11駅には、それぞれの特色、面白さがあり明知鉄道に乗車して、各駅を楽しむのもまた、ローカル線ならではの良さがある。カメラ片手に鉄道ファンも多く訪れている。

明知鉄道では、料理列車を運行している。様々な趣向をこらした企画で、走行する列車の中で料理が楽しめる。
「寒天列車」は大人気で、山岡町特産細寒天を使用しており、懐石料理としてアレンジし提供している。寒天は、ヘルシーでダイエットにも効果的と多くのファンに愛されている。
人気の道の駅「おばあちゃん市・山岡」のお弁当が楽しめる「おばあちゃんの山菜弁当列車」は、地元で採れる新鮮な山菜がたっぷり！5月だけの限定だが、季節感たっぷりの料理列車だ。
面白い企画の「枡酒列車」は、列車に揺られながら岩村城下町にある造酒屋岩村醸造のお酒を4種類が飲み放題・飲み比べができる。更に花白温泉のおしゃれなお弁当も堪能できて、温泉無料券と明知鉄道1日フリー乗車券まで付いてくる。ほろ酔い気分で列車の旅を満喫するのもいいだろう。
春の桜のシーズンには、「おばあちゃんのお花見弁当列車」が最高だ。やさしい味わいのお弁当を食べながら、車窓から見える桜に話もはずむことだろう。
秋には、地元で採れたきのこをメインにした「きのこ列車」が運行する。深まる紅葉の景色を見ながら、秋の味覚を堪能する贅沢な時間だ。
最後は、冬の味覚「じねんじょ列車」。じねんじょは、昔から滋養強壮や疲労回復によいとされ、冬の大切な食材としてこの地域でも親しまれてきた。雪景色を見ながらじねんじょ料理でこの冬を元気に過ごす。パワーあふれる料理列車だ。

この様に、恵那から明智間を54分かけて走行し、車窓の長閑な田園風景を望む料理列車は、他では中々見あたらないだろう。明知鉄道のゆるキャラ「てつじいとてっちゃん」が迎えてくれる、地域の人達や観光で訪れる人達にも愛される明知鉄道は、今日も安全運転で人々の生活を乗せて走っている。